一眼カメラって、レンズによって撮れる写真が全然違うところが面白い。
僕がカメラを始めたのは3年前くらいのこと。その時から何回かカメラを変え、レンズを試してきました。その度に
「こんな写真が撮れるのか!」
と驚かされます。
試すレンズを決める際には、他人のレビュー・評価を一番の指標に据えています。しっかりと知識のある人に教えてもらうと妙に納得感があるし、経験上ハズレが少ない。
今回は、僕の信頼する新宿マップカメラの店員さんにおすすめしてもらったレンズを購入しましたので紹介します。いうまでもなく、大当たりのレンズでした。
Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical
18世紀にウィーンで設立された世界で最古のカメラメーカーのひとつ、Voigtlander(フォクトレンダー)。そのフォクトレンダーの出しているマクロレンズ「MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical」を購入しました、
新宿マップカメラの店員さんが
「一つだけ、僕が選ぶとしたらこれです。」
とオススメしてくれてから、ずっと気になっていました。
65mmという他にはない焦点距離の単焦点にもかかわらず、ネットでの評価は抜群。さらに、あがっている作例はどれも目を見開くものばかり。調べれば調べるほど、どんどん欲しい気持ちが膨れていき、ついに手を出してしまいました。
それからはほぼ毎日使うくらい、このレンズがお気に入りになっています。
Voigtlander APO-LANTHAR 65mm F2の外観・スペック
相棒であるSONY α7IIIへの装着感は抜群です。
レンズの外観は金属製で無骨。α7IIIに装着した姿は妙にマッチしていて、まるで元から一体となっているカメラのようです。サイズもちょうど良い。
レンズ自体は625gと、単焦点レンズとしては重めの部類ですが、そこまでフロントヘビーには感じません。
スペック表はこちら
名称 | Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical |
---|---|
焦点距離 | 65mm |
開放F値 | F2 |
レンズ構成 | 8群10枚 |
絞り羽根枚数 | 10枚 |
最大撮影倍率 | 1:2 |
フィルター径 | φ67mm |
重量 | 625g |
最大撮影倍率 | 1 : 2 |
やはり気になるのが65mmという焦点距離。標準レンズというと50mmくらい、中望遠帯のレンズは85mmくらいがよく見るラインナップだと思いますが、どちらにも当てはまらない中途半端な焦点距離のレンズです。
けれども実際に使ってみると、その画角に使いにくさは感じません。むしろ標準域と中望遠の良さを両立できるいい感じの画角なのでは、と思ってしまうほど。スナップでもポートレートでも使いやすく感じます。
絶妙なフォーカスリングのトルク感
レンズの動作はマニュアルフォーカスのみで、オートフォーカス機能はありません。ただ、電子接点はちゃんとついているので、ソニーのミラーレスカメラで使うと、フォーカスリングをまわした際に自動でピント部を拡大してくれます。
Lightroom使用時には、レンズのプロファイルも読み込んでくれます。
フォーカスリングには適度なトルク感があって、ピントあわせはとてもやりやすい。この部分はマニュアルフォーカスレンズで一番大事な部分だと思っていて、これだけしっかりしていると信頼度もグンと上がります。
最大撮影倍率1:2のハーフマクロ
このレンズの強みは、被写体にグッと寄れるところ。
最大撮影倍率1:2のハーフマクロというもので、料理や小物の物撮り、花などもこれ一本で撮れてしまいます。
マクロレンズは被写体にグッと寄って撮影することが得意で遠景が不得意なものが多いのですが、こいつはそれがない。遠景を撮影しても解像感の落ちを感じません。
だからスナップでもポートレートでも使いたくなってしまいます。オートフォーカスがないだけで、実はかなり万能なレンズなのではないでしょうか。
Voigtlander APO-LANTHAR 65mm F2の作例@芝公園
せっかく購入したので、しばらくはカメラにつけっぱなしに。
ちょうど先日、友人と共に芝公園までカメラ片手に朝食を食べにいってきたので、そのとき撮った写真を作例としてご紹介します。
駅を出るときに撮った写真。
わざと逆光で撮影して、ゴーストとかがどのくらい出るか確かめてみました。パッと見でゴーストを感じるので、耐性はそこまで高くないのかも。
ただ、コントラストの低下などは感じません。
最近のレンズはゴーストやフレアの耐性が良すぎて、そういう類のものがまったく出ないというレンズも多いので、僕はこのくらい出てくれると逆に面白く感じます。
ちなみに撮影時の絞り値はF4。F4でもこんなに綺麗に光芒が出るのは、驚きでした。10枚絞り羽根の恩恵かな?
F2スタートのレンズですが、絞り開放からとても描写が綺麗。出てくる写真の立体感が気持ちよくてついつい開放で撮影したくなります。
ただ、マニュアルフォーカスゆえに開放で撮影するとはずすことも時々あります。ピントを外さないようになるまでにはもう少し慣れが必要かもしれません。
スナップ撮影であればF4あたりに絞って撮るくらいが良いかもしれません。調子乗って被写体に寄りすぎると、あとで大画面で見た時に驚くことになります。
解像感はF4でもうピークに達します。それ以上はF8でもF11でもキレに変化は感じませんでした。遠景を撮影するときはF4あれば十分。
「あれ、これ本当にマクロレンズだっけ?」
と感じてしまうくらい、本当に何でもこなせるレンズです。
ピント合わせに多少の難しさは感じるものの、オートフォーカスとは少し違った写真が撮れるのは魅力的。ピントが少し外れてるくらいが、その場の雰囲気を妙に表現してくれているような気がします。
Voigtlander APO-LANTHAR 65mm F2の作例@旧朝倉亭
さらに別日、友人とともに代官山にある旧朝倉亭でも同じように撮影をしてきました。
入り口あたりでも青々しいもみじをパシャり。
光源のそこまで多くないところでは非常に綺麗なボケ感が得られるこのレンズ。しかし、他サイトでも言及されていますが、このレンズは後ろに強い光源があるとボケが少し汚くなります。
この写真は開放で撮影しているのですが、レモン型にへしゃげてしまっているように見えますね。さらに、手前にあるボケたもみじは滲んでいるように見えます。
一段絞ると10枚羽ならではのカクカクとした玉ボケになります。この辺は好みが分かれそうですね。
にしても、旧朝倉邸はもみじが多い。秋になるときれいな紅葉が見られそうです。
大正を感じさせる内装。窓から差し込む光が影を際立たせます。
他サイトなどでよく
「ツァイスと似た画が撮れる」
と評されるこの65mm F2レンズですが、確かにその雰囲気を感じます。色収差のないすっきりとした描写と少し落ち着いた色乗りがそう感じさせてくれるのかも。
物憂げな表情はこのレンズにぴったりとハマります。
人を撮影するのにも使えるこのレンズ。背景をぼかしたくてつい開放のF2で撮影したくなってしまうのですが、被写界深度の浅さゆえにPCで見るとピンとを外しているものもちらほらありました。
でもまたそれが良い雰囲気に感じてしまいますね。思わぬところにピントがあって、独特な雰囲気に仕上がるのはマニュアルフォーカスならでは。
この写真は、このレンズで撮れた写真の中で一番好きな写真。
被写体のさどまち(@mck_sd)の表情が良いのはもちろん、木材の質感や陰影の絶妙さなど、全て気に入っています。ある程度奥行きのあるところで撮影をしていますが、開放F2でこれだけボケ感のある写真を撮影できたら十分でしょう。
そういえば、写真の歪みとかは一切感じませんね。撮影時のストレスがない。
これも好きな写真。
この赤や背景の青のコントラストが気持ち良いです。和服の質感もしっかりと再現されていて、この辺はさすがと感じます。この色表現もやっぱりツァイスレンズと似ているかも。
店頭に置いてあるただのマネキンでしたが、この赤に魅せられて、気がつけば10枚ほどシャッターを切っていました。一度ピントを合わせればそのままの勢いでシャッターを切れるのもこのマニュアルフォーカスの強みですね。
難しさの中に楽しさを感じるレンズ
難しいけど、めちゃくちゃ楽しい。
TAMRONのEマウント用ズームレンズ28-75mm F2.8なんかは万能で、なんでも撮影できてしまうところが気に入っているのですが、今回のVoigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Asphericalはまた違った良さがあります。
ピントを追い込む時の楽しさや、バチっとあった時の気持ち良さ。今まで使ってきたレンズとは明らかに違う面白さがあります。
ついつい敬遠してしまうマニュアルフォーカスレンズですが、気になっている人はぜひ試してみてほしいと思っています。
僕はこのレンズで、また一つ写真撮影が楽しくなりました。
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今回紹介したMACRO APO-LANTHAR 65mm F2とはまた違った方向のレンズですが、TAMRONの28-75mm F2.8のレンズも手放せない。
TAMRONがあるから、今回のレンズがさらに楽しく感じるんだと思います。そのくらい素敵な万能レンズ。